安治川親方(元横綱・旭富士)の毒舌解説

そこまで言う!?「大相撲ダイジェスト」のケチョンケチョン解説
「いやあ、『大相撲ダイジェスト』の安治川親方のコメントには笑わせてもらってます。とにかくとりつくシマがないくらい辛辣なコメントをするんですよ、ボソッとね」
 と言っておもしろがるのはコラムニストのえのきどいちろう氏。

 安治川親方といえば元横綱・旭富士。青森出身で現役時代からムスッと口数の少ない力士ではあったが、いまやその数少ない言葉で土俵の力士をバッサバッサとなで斬り。痛快、ときに抱腹絶倒、ときに「そこまで言うか!?」なのである。

 たとえば、名古屋場所8日目の「大相撲ダイジェスト」、旭道山?鬼雷砲戦を誌上で再放送してみよう
(この取組、旭道山が当たって頭をつけたが、鬼雷砲の引き落としにあって両手をバッタリ)

安治川 ま、旭道山、低く当たってね、最後は足をスベらしたね。
アナ そうですね、スベッた感じです。
安治川 スベるんだったら、足袋をはかなきゃいいのにね。
アナ ……(絶句)。

 この解説に感心するのは、前出のえのきど氏である。
「旭道山の“足袋片足はき”というのはトレードマークというか、もはやそういうものとして成り立っているわけで、そんなところにまで辛辣なコメント投げてしまう親方はスゴい」

 同じく名古屋場所8日目の放送から“名調子”をお伝えする。懸命にフォローしようとするアナウンサーを突きはなす安治川親方。この土俵外の駆け引きにもご注目を――

 まず春日富士?魁皇戦。
(春日富士が突きから一転して引き、突き落としの勝ち)
安治川 魁皇は立ち合いが高いから、その次の攻めが遅いんでしょうね。
アナ しかし、春日富士の立ち合いもなかなかよかったのではないですか。
安治川 まあ、相手が“不細工”なだけですから。
 春日富士は自分の弟子だからひょっとして謙遜のつもり?

 次は、武双山?智ノ花戦。
(武双山のつっぱりをかわし右をさして寄る智ノ花。粘る武双山を下手ひねりで破る)
アナ しかし、さすが智ノ花は粘り強いですよね。
安治川 まあ、右をささせる武双山が悪いんでしょ。

小錦?三杉里戦では――、
(小錦に正面から当たっていた三杉里、寄り切られて負ける)
安治川 (呆れたように)まあ、まともにいったら勝てないのを分かっていて、まともに当たる三杉里が悪いでしょうね。
アナ ちょっと、まともに当たりすぎましたか……。

 お次は久島海?琴稲妻戦。
(小手投げで久島海の勝ち)
安治川 (久島海には)あれしかないんだけどね、小手投げしかね。それしかないと分かっていて、食うのが悪いんじゃないすか。
 一貫して、“負けたのは負ける奴が悪い”の論法。もうケチョンケチョンだ。相手が“相撲協会の宝”貴ノ花だろうと、舌鋒は少しも鈍らない。

 その濱ノ嶋?貴ノ花戦。
(突き合いのすえ、寄り切りで濱ノ嶋の勝ち)
安治川 貴ノ花はまわしを取ればなんとかなるとでも思ったんでしょうかねえ。突き合いも濱ノ嶋が勝ってますよ。下から下から押していってるからね。
アナ 土俵際――ここで貴ノ花はまだまだと思ったんですが……(と貴ノ花にも花を持たせようとするが)。
安治川 いいえ、濱ノ嶋十分です。(濱ノ嶋の)万全の相撲です(とりつくシマなし)。
 勝った力士といえども容赦のないのが、もうひとつの特徴。

 同じく、5月場所8日目の「大相撲ダイジェスト」。
 貴ノ浪?剣晃戦は、つり出しで貴ノ浪の勝ちだが――、
安治川 (いきなり)貴ノ浪は相変わらず相撲が雑ですよね。
アナ 雑、ですか?
安治川 やっぱり、もっと自分のしっかりした技を身に付けてですね、覚えていかないと。
 この後、番組終了間際にもう一度貴ノ浪についてのコメントを求められ、
「なんか相撲ぶりがですね、横綱に上がるような相撲じゃない感じがしますよね」
 とバッサリ。

 肥後ノ海が勝った、武蔵丸?肥後ノ海戦については――、
アナ 今日は肥後ノ海、いい相撲とってましたね。
安治川 いい相撲というより、相手が相撲とってなかった。
 まさに前代未聞の“名調子”といえるんではなかろうか。

 相撲評論家の小島貞二氏は、ほぼ20年の間、欠かさず「大相撲ダイジェスト」を見続けているとか。その小島氏いわく、
「安治川親方がおもしろい?ああ、旭富士ね。僕は本人はあまり知らんが、彼はわりとぶっきらぼうでしょう。まだテレビ慣れしてないというか、そういう親方の発言として新鮮なのかもしれない」

(略)

 とまあ、こうして見てきたわけだが、やはりピカイチは安治川親方の解説と分かる。
 これはどうしても安治川親方本人に話が聞きたくなった。
 早朝、JR錦糸町駅近くの安治川部屋を訪ねた。
 安治川親方は、自らまわしをつけて稽古をつけている。
「○○、もっと腰おとせ!」
「○○、もっと力つけろ!」
 などと、すべての弟子に声をかけ、叱咤する。
 稽古後、風呂から上がり浴衣姿でいる安治川親方に訊く。
 ――親方の解説が評判になってます。
「僕も後援者の方たちから耳にしてますよ。あれでよいという人と、結構きついんじゃないかという人がいて、賛否両論ですね」
 ――辛辣なのは意識的?
「(きっぱりと)もちろん。僕は関取たちに強くなってほしいと考えて言っている。ここ2場所は横綱不在です。下からシノギを削って上にきてほしいと考えて言っているんです。あとは、言われた本人のとり方でしょう」
 ――解説のとき、なぜいつも下ばかり見てるんですか。
「(驚いたように)そうですか……。私はいつも、下のモニターを見てるだけなんですがね。意識してませんでした」


週刊宝石(原文ママ)



毒舌解説を見た視聴者の反応

不愉快な解説
大相撲名古屋場所も武蔵丸の初優勝で終わったが、10日の「大相撲ダイジェスト」(朝日)の解説者は、元横綱旭富士の安治川親方だった。勝者をほめず、「負けて当然」などと敗者をけなすような口ぶりで各取組を酷評していた。聞いている者には不愉快だった。後輩に対し、愛情のある助言と解説を望みます。(横浜市・○木○子・主婦・36歳)

出色だった解説
10日の「大相撲ダイジェスト」の安治川親方の解説は出色だった。柔和な笑顔で、意外にキツーい解説をピシピシ決めていく。同部屋だった旭道山には「滑るくらいなら足袋ははかなきゃいい」。一方、いい攻めくちの力士には「万全だ」とほめるなど、部屋での稽古のように遠慮せず口に出すので痛快だった。(調布市・○藤○雄・無職・60歳)


朝日新聞テレビ欄投書



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